映画『ミスター・ホームズ』感想

三連休に『ミスター・ホームズ』を観に行きました。
シャーロキアン初段としては行くしかないなと思っていたので、近所でまだ上映中だったのは大変幸運でした。
推理物というよりも、老いとそれにともなう心身の衰えにどのように向き合っていくか、に主眼が置かれた映画だったように思います。
並外れた体力や恵まれた身体能力、それにずば抜けた頭脳を持っていた人間が、老齢に伴う衰えをまざまざと思い知らされる。それってものすごい絶望だと思うんです。作中のホームズは日を追うごとに悪化していく物忘れに必死に抗おうとしますが、そのさまが実に切ない。
構成としては、ホームズが自身の引退の原因となった35年前の事件を描く過去パートと、それを思い出そうとしながら田舎での日々を過ごす現在パートが平行して進行していきます。
60代の全盛期は過ぎつつもまだまだ活力溢れるホームズと、93歳になって記憶力も体力も衰え、愚痴っぽい老人となったホームズを演じ分けるイアン・マッケランの演技が素晴らしかった。老ホームズを尊敬しつつ、時に対等にものを言ってみせる聡明なロジャー少年もかわいい。事件や人死にはあれども悪人が出てこない、というのも個人的にはポイントが高かったです。
原爆投下直後の(1947年が設定年代でした)広島を訪問するくだりは、ちょっと意味が分からなかったけれど……。

ネタバレに近いですが、『救われる人がいるのなら、優しい嘘も必要』というのが隠れたテーマだったんでしょう。
忘れていた事件を全て思い出すことで、ホームズは自身の後悔を昇華し、残された日々を前向きに生きていくのだろうと思わせるしみじみとしたラストに、ほんのりと悲しみの余韻が残る映画でした。

2016.07.20 | | コメント(0) | トラックバック(0) | 勝手にレビュー

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月下部 嵯(かすかべ・たかし)

Author:月下部 嵯(かすかべ・たかし)
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